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広島高等裁判所 昭和50年(ラ)36号 決定

抗告人

李万寿

相手方

村上治澄

主文

本件抗告を却下する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件競売手続停止決定は民事訴訟法五五〇条四号所定の書類の堤出に基づきなされたものである。

任意競売手続もしくは強制競売手続において、債務者が被担保債務もしくは執行債務を弁済したときは、債権者がその申立を取下げない限り、債務者としては、執行方法の異議ないし抗告、もしくは請求異議の訴を提起し、必要に応じてそれに伴う執行停止の仮の裁判を得ることができる(以下これを終局的救済手続という。)。そして、前記四号所定の書類の提出に基づきなされる執行停止の措置は、右終局的救済手続の存在に徴し、その手続に前駆してなされる、債務者保護のための暫定的措置と解すべきである。従つて、右終局的救済手続における仮の裁判に関して不服申立が許されないこと(同法五〇〇条三項参照)と対比して考えると、より暫定的な性質を有するに過ぎない本件執行停止決定に対する不服申立は許されないものと解するのが相当である。

もつとも、債権者としては、右執行停止決定があつた後相当期間を経過したときは、右執行停止が暫定的措置であることにかんがみ、執行裁判所に対し競売手続の続行を申立てることができ、また、執行裁判所は、右相当期間経過後は、職権によつても競売手続の続行をなし得ると解すべきであるから、前記見解をとることにより、債権者が特に不利益を被ることはない。

よつて、本件抗告は不適法であるから却下すべきであり、抗告費用の負担について同法八九条を適用して、主文のとおり決定する。

(宮田信夫 高山健三 武波保男)

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